2011年3月31日木曜日

チャリティとマーケティング

『チャリティとマーケティング』とは一見相反する事例のようだが、知人が開催したチャリティイベントがタイムリーな話題でかつマーケティング的にも興味深い結果を見せたのでご紹介したい。

よく晴れた週末、市内北部の大規模産直店でその出店者や近隣の有志など数店舗での共催にてこのイベントは行われた。飲食品の屋台販売であるが方式は完全チャリティ。材料等の費用は各店舗による負担で売上の全額が被災地に義援金として贈られる。もちろん数量限定、売り切れ御免である。
はたして結果は・・・
45分ですべての商品が完売、急遽用意した別メニューも15分で完売する人気ぶりだった。
400円のホットドッグの釣銭600円をそのまま募金されたり、さらに千円や1万円を募金したりといった客が想像以上に多く驚いたとのことだった。
産直店では1時間で終了したイベント後も盛況が続き、結局通常の3割近く多くを売り上げてこの日の営業を終えた。

この一連の過程にはマーケティングの要素があふれている。

まずは『完全チャリティ、全額寄付』である。
400円のホットドッグを購入してもその全額が寄付されるならば、ホットドッグは実質無料なのである。
消費者が完全に合理的な経済人であれば、商品やサービスから自分が得られる効用と、それを手に入れるために支払うコスト(お金)を勘案し、期待効用を正確に認識した上で最も期待効用が高い商品やサービスを購入するはずである
しかし、実際には、消費者は期待効用を正確に認識できないときがあり、その多くはコストがゼロ、つまり無料の商品やサービスが関わっているときである。
商取引はたいていの場合良い面と悪い面があるが、何かが「無料」になると目先の支出が消えることにより、人は悪い面を忘れ去り提供されているものを実際よりもずっと価値のあるものと思ってしまう傾向がある
またこれは、人間が本質的に失うことを恐れているからであると考えられている。
つまり400円でホットドッグを購入した以上寄付で失うものはない。のであり、400円寄付した以上ホットドッグの購入に費用はかからない。とどちらにでも解釈できるのである。
これでは誰でも知らず知らずのうちに財布の紐は弛んでしまうだろう。

次に『売り切れ御免』である。
これはズバリ『フラッシュマーケティング』の典型である。スーパーや百貨店の催事場で見る時間限定の値引きセールや最近はやりの『グルーポン』などがこれにあたる。
その時間にたまたまそこに居合わせたから享受できる『偶然のお得感』にひとは弱い。ましてやあれよあれよの内に売り切れてしまうのであれば、早く買わなくては『得した気分になれない=損してしまう』と射幸性は抜群である。そう、ここにも人間が本質的に失うことを恐れているという要素が隠れている。

さらにこの時期『消費自粛の波』が荒れ狂う時期であるにも関わらずこれだけの盛況ぶりを見せつけられれば、チャリティという免罪符的効用が明らかに感じとれるのは私だけではないだろう。消費自粛はごく自然発生的なものであり、誰が攻められるべきものでもないだろう。被災地の凄惨な光景や訃報に毎日接していれば、ひとは誰でもいたたまれない気持ちとなり極端になんでも自粛する行動に走りがちである。また、皆が悲しんでいるときにひとり、または少数で騒いでいては浮いてしまうのではと懸念するきもちもわく。消費者はある意味ではこうした免罪符を求めているのかもしれない

極めつけはイベント終了後も続く産直店の盛況ぶりだろう。
多くのイベントが自粛の波にのまれ中止または延期となる事例が相次いでいる。しかし、このような事例をもってするとチャリティの性格を併せ持つイベントはまさに理にかなっており、またこの時期こそ必要とされているものなのである。ひとのいないところで募金活動はできない。イベントこそ最良のチャリティ場所である。近々に計画されるイベントでは例えば物資やエネルギーの不足が懸念されるかもしれない。そうでなければ、是非、大々的に挙行して欲しいと願うばかりである。


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